温かいコーヒーと冷たいコーヒー

ある実験では、建物に入ってきた被験者を、女性の実験助手がロビーで出迎える。
助手の手にはコーヒーの入ったカップと、クリップボードがある。
研究室の階まで上がるエレベーターの中で、助手は被験者の情報をクリップボードの用紙に書き込みながら、何気なく、コーヒーを持っていてもらえないかと頼む。

コーヒーを返してもらったら、被験者を実験車のところに案内する。
その際、ある被験者にはホットコーヒーを、別の被験者には冷たいコーヒーを手渡す。
研究室に着いた被験者はすぐに、架空の人物に対するアンケートを実施する。

アンケートの内容は割愛するが、この時のアンケート結果が持ったコーヒーの温度によって変化する。
温かいコーヒーを持った被験者は、アンケートの出てくる人物を暖かい人(人間的、信頼できる、友好的)と判断した。

つまり、ごく短い時間、手の皮膚に身体的な温かさを感じた経験が、実際に対人的な温かさの印象を与えたのである。

器が重いとおいしく感じる

参考文献 触れることの科学