から揚げの原理解体

から揚げの原理解体

から揚げのレシピを科学的に解説

料理のレシピ本には必要な食材や調理工程が記載されているが、何故そうなのかという理由は載っていない

多くの人が、特に疑問を持たず「料理はそういうものだから」と感じてしまうが、食材や調理工程には理由がある。

ここでは、レシピを全て分解して、各事象を解説する。
これにより、分解された料理の原理を理解することができ、更に組み合わせを変えることで料理に応用を利かすことができる。

今回は、から揚げのレシピについて、原理解体していく。


■ 例:材料(2人分)

●鶏もも肉…2枚(約500〜600g)
●醤油…大さじ2
●酒…大さじ1
●塩…少々
●しょうが…1かけ(すりおろし)
●にんにく…1かけ(すりおろし)
●こしょう…少々
●片栗粉…適量
●揚げ油…適量

上記は一般的なから揚げのレシピの材料である。


1.鶏モモ肉を使う理由

動物の脂肪は皮下に蓄えられる
牛や豚のような大動物は脂肪組織を残して皮だけを取り除くこともできるが、鶏肉の場合は皮を除くと脂肪の量も半分から数分の一に減ってしまう

●あっさりした和え物などには、白身で柔らかく脂肪が少ないささ身が適している。
●焼き物、揚げ物、煮物などには、味にコクがでる皮つきが適している

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(単位:100g中の脂質のg数)

鶏モモ肉は、脂質が多くから揚げにするとジューシーに仕上がる。


2.醤油を入れる理由

から揚げをつくる時、基本的に醤油が入っている。
この理由は以下の通りである。

①味を付ける
②香ばしい香りを付ける
③水分を加えることでジューシーに仕上げる
④色を付ける

①濃い口醤油は塩分濃度は16~17%となっており、香りは醤油の中で最も強い。

醤油は、塩味とうま味、メイラード反応でできた香ばしい香りと発酵による香りが特徴になっている。

③揚げ物は、衣中の水分が抜けて代わりに油が入り、水と油を交換する
食材にあらかじめ、水分を加えておくことでから揚げをジューシーに仕上げる。

④デンプン(片栗粉)+アミノ酸(醤油)を油で揚げると色がつきやすい
これは、メイラード反応によるものである。

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3.酒を入れる理由

から揚げをつくる時、下味に日本酒を入れる事が多い。
この理由は以下の通りである。

①日本酒のアルコールが肉の繊維の間に入り込み、加熱したときにふっくら仕上がる
②日本酒に多く含まれているアミノ酸が鶏の味わいを深める
③加熱中に失う水分を補うことで、ジューシーに仕上がる
④カラリと揚がる

ただし、入れすぎると鶏肉の味が薄まってしまい、カリッとしなくなるので注意が必要である。

②鶏肉は、赤身肉と違い淡白な味わいである。
そのため、下味にアミノ酸が多い醤油や酒を加えることで、うま味を補強している。

アルコールが蒸発(78℃)して、衣を押し広げながら、衣の外に逃げていく。

このようにして隙間の多くなった衣からは、アルコールに続いて水分が抜けていき、そこへ油が入り込んでくるので、衣がカラリと仕上がる。


4.「しょうが」「にんにく」「こしょう」を入れる理由

考え方としては、鶏肉の臭みを取るため。
鶏肉に別の強い芳香を加えることで、元々の食材の臭みを感じにくくする。

から揚げの場合、通常の焼き料理と違い衣で包むため香りが抜けにくい
これは、嫌な臭いも完全に包み込んでしまう
そこで、下味に「しょうが」「にんにく」「こしょう」を入れる事で、匂いをマスキングする。
さらに、食欲を刺激する香りとして機能する。

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経験的な話になってしまうが、醤油と相性の良いスパイスが「にんにく(ガーリック)」「しょうが(ジンジャー)」「こしょう」となっている。

上記の表から、応用として、醤油と相性の良いスパイスとして「ターメリック」「ローズマリー」「レモングラス」などがある


5.片栗粉を使う理由

グルテンの材料を含まない片栗粉(ジャガイモデンプン)を使うことで、独特の硬く軽い衣になり、小麦粉よりザクッ、パリッとした感じにる。

一方で、小麦粉を混ぜることでグルテンが形成され水分が抜けにくい、ふんわりした生地にすることもできる。


このように、から揚げに加える材料には、全て科学的な理由がある。
次に調理過程について見ていく。


■ 例:作り方

①鶏もも肉を一口大に切る。

②下味をつける
ボウルに鶏肉を入れ、
●醤油
●酒
●塩
●しょうが
●にんにく
●こしょう
を加えてよくもみ込む。

③漬ける
15〜30分ほど置く。

④衣をつける
汁気を軽く切って、片栗粉をまぶす。

⑤ 揚げる
油を 150℃ に熱し、鶏肉を入れて揚げる。
3〜4分ほど揚げて、一度取り出す。

⑥二度揚げする
少し休ませてから、180℃前後で 1分ほど二度揚げ する。


6.鶏肉の切り方

①鶏もも肉を一口大に切る。
ボウルに鶏肉を入れ、
●醤油
●酒
●塩
●しょうが
●にんにく
●こしょう
を加えてよくもみ込む。

大きさを揃えることで、火の通りを揃える。
また、鶏のから揚げをつくる時、皮をきちんと広げて肉を包むようにする
これにより揚げた時に、皮が熱で縮み、丸く綺麗な形になる


7.下味をつける

②下味をつける

下味をつけるときに、最後にごま油を加えるテクニックが存在する。
ごま油を加えることで、肉の周りに油の層ができ、揚げた時に肉からの水分の蒸発を多少和らげる。
これにより、ジューシーに仕上がり、下味のまとまりを良くする


8.漬ける

③漬ける
15〜30分ほど置く。

なぜ、15〜30分ほど置くのかというと、
調味料は短時間では中心まで均一に浸透するわけではなく、主に表面付近に味がつく。
から揚げは一口大なので、それでも十分に味を感じやすいためである。


9.衣をつける

④衣をつける
汁気を軽く切って、片栗粉をまぶす。

一つのテクニックとして、はじめに小麦粉をまぶして、鶏肉から出てくる水分を吸ってから、次に片栗粉をまぶすことで衣の薄さとカリッと感を出すことができる。
これにより、粉が調味液を吸ってぼやけた味にならず、中はジューシー、外はカリッとという食感を出すことができる。


10. 揚げる

⑤油を 150℃ に熱し、鶏肉を入れて揚げる。
3〜4分ほど揚げて、一度取り出す。

⑥二度揚げする
少し休ませてから、180℃前後で 1分ほど二度揚げ する。

二度揚げとは、まず低めの温度(150℃前後)で揚げ、いったん取り出した後、油の温度を上げて(180℃前後)再度入れてあげる方法である。

揚げるという処理は、食品に含まれる水分を油に置き換える処理である。
油の温度が高すぎると、表面に適度な揚げ色がついても中心にはまだ火が通っていないといった状態になる。

これを避けるため、最初は低めの温度で揚げ一度取り出し予熱で中心まで火を通し、加熱後少しおいている間に外側に移動した水分を、再度加熱して蒸発させることで、カリッとした衣になる。

ちなみに、二度揚げでカリッとしない場合には、3回、4回と揚げなおすこともある。

ここでポイントなのは、中身は蒸し焼きであるという点である。
勘違いしてはいけないのが、170℃の油で揚げた場合、食品全体が170℃で加熱されるわけではない
あくまでも、外側が加熱され伝導熱によって中心に熱が通る。
その為、衣の中の鶏肉は蒸されている状態となっている。
これを意識して、温度管理をしなければならない。

10.1 ポイント

ジューシーに仕上げる方法として、低温の油から揚げるというテクニックが存在する。
冷たい油の中に、鶏肉を入れゆっくり温度を上げていく。
(揚げ時間は合計約10分間が目安)
最初は低温で加熱し、最後には高温で加熱することになる。
これにより、中身が低温で調理されたように柔らかく、外はカリッと仕上がる。
ただし、冷たい油で揚げるより二度揚げした方が外のカリっと感は持続する。


11.から揚げがベチャつく理由

揚げ物をした時、上手く揚がらず水分の多い衣になってしまうことがある。

この理由は
①揚げる油の温度が低い
温度が低すぎると、水分が蒸発せずベチャっとした衣になってしまう。

揚げ油が古い
古い油を使うと、食材の水分の蒸発量が少なく、吸油された油の量が少なくなり、一方で表面に付着している油が多くなる。

強力粉を使っている
強力粉を使うと、衣の中に水分が残り、重くてベトッとした、かたい衣になってしまう。

揚げ鍋に蓋をしている
揚げ物の表面近くの水分が十分に蒸発できるようにすることが必要である。
揚げ鍋に蓋をしていると、水分の蒸発が妨げられる。

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また、鍋の上は、食材から蒸発した水蒸気で湿気が多い。
揚げ鍋に付いている油きりアミを使うとき、カラッと揚がった衣が水分を吸ってしまう場合があるので注意が必要である。

衣が厚すぎる
衣が厚いと油を吸いやすく、重くなってしまう。

⑥揚げた後の油切り不足していると、べたついた衣になってしまう。


11.油の付着量について

揚げ物のとき、揚げ鍋中の油が減少する。
これは、ほとんど、揚げだねへの付着によるものである。
一般的に、高温で揚げ時間が長いほど油の付着量が多くなる
。条件によって、油の付着量は異なるため、一概にはいえないが、ほぼ10%内外が平均値である。
から揚げ(小麦粉や片栗粉を軽くまぶす)は衣揚げより少なく、ほぼ5%内外といわれている。

衣揚げの油の付着量の多い理由は、衣中の水分が抜けて代わりに油が入り、水と油が交換するためである。


12.から揚げにレモン

から揚げにレモンを搾る理由としては、
●酸味で脂っこさを軽く感じさせる
●香りが加わって後味が締まる
●味の方向が変わるので飽きにくくなる

人は酸性のものを好み、アルカリ性のものを不味く感じる傾向がある。
そこで、レモンを搾り、酸性に傾けることで、「味を締め」美味しく食べれるようにしてる。


13. まとめ

料理科学的にから揚げという料理を分解して考えると。

鶏肉という淡白な素材にうま味と油脂を添加して構築していると考えられる。

①油脂の多いモモ肉を使う
②アミノ酸(うま味)が少ないので、醤油と酒を添加する
③揚げることで、油脂を添加する。
④柔らかい一つの食感の為、衣をまとって揚げ、食感を2つにする
(カリッ + ジューシー)
⑤さっぱりさせるため、レモンを搾る

多くの人がおいしいと感じやすい料理は、

砂糖(糖質)+ダシ(アミノ酸)+脂(油)この内の2つ以上を含むもとさている。

から揚げという料理は、ダシ(アミノ酸)+脂(油)をベースに構築されているのである。

そして、レモンを添えることで味の印象が変わり、食べ飽きにくくなる。

このように、各事象を分解し、再構築することで、料理の基礎レベルを上げ
料理レシピの理解を深めることができる。

油脂が膨張剤の役割を担う理由

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ケーキの中には、重曹やベーキングパウダーのような化学膨張剤を使わず、泡立てた油脂だけを使うものもある。
油脂はかき混ぜると空気を取り込むすぐれた能力を持ち、ケーキの中で膨張剤の役割をはたしたり、液状のクリームを泡立つ雲に変えたりする。

参考文献 塩、油、酸、熱

オイルケーキはしっとりする理由

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オイルケーキが柔らかくしっとりする理由

ケーキをつくる時に、バターではなくオイル(オリーブオイルなどの油脂)を加えることがある。
オイルは小麦粉のたんぱく質を効率よくコーティングし、柔らかいバターの働きと同じように、強いグルテンの網ができるのを防ぐ
グルテンは水分を含むと形成されるため、このオイルのバリアがそれを大きく抑制し、もっちりではなく、柔らかい食感に仕上げる。
グルテンが少ないと、生地に含まれる水分量が多くなり、しっとりとしたケーキになる。

クッキーの脂肪と口当たり

参考文献 塩、油、酸、熱