肉を柔らかくする方法の一つに食塩添加(※ブライニング)がある。
これは、肉の保水性を高めることによって柔らかくする方法である。
※ブライニングとは、塩水(実際は塩以外に砂糖なども含まれる場合が多い)に肉を漬けこむことで、柔らかくする方法。精肉業界では、注射により添加する場合がある。
一般に、食用に提供される肉のpHは5.5前後のため、肉調理の前処理として食塩を用いることは、保水力向上および筋原線維タンパク質の可溶化の効果によって調理肉が柔らかくなるとされている。
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「食塩は水溶液中で、NaCl⇄Na⁺+Cl⁻のように電離し、筋原線維内に入ったNa⁺は、太いフィラメントと細いフィラメントのすき間で陰イオンとゆるく結合し、一方、Cl⁻は陽イオングループと結合して陽イオンをなくしてしまい、静電気のバランスを保った状態にします。その結果、等電点をより酸側に移動させます。
さらにCl⁻はフィラメント間で陰イオンを増して、相反発する静電気力を強め、フィラメント間を広げ、筋線維をゆるめて保水力を向上させます。(膨潤化)
食塩はまた両フィラメントを結合させているクロスブリッジを除き、太いフィラメントからミオシンを溶出します。(筋原線維タンパク質の可溶化。この効果は、ピロリン酸の存在で増大します)」(平野正男,1999,p120,今さら聞けない肉の常識)
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ここで言っている食塩を添加するとは、肉に塩をふるのではなく、食塩水に肉を漬けこむという事である。
※肉に塩をふるだけでは、浸透圧により脱水作用が起こり固くなる。
これにより、浸透の作用から塩水から肉の細胞内部へと水分が移動します。つまり、塩水から肉の細胞に水が移動して、肉汁たっぷりになるという効果が生まれます。さらに、上記の理由から塩の効果で肉が柔らかくなるという事です。
したがって、ブライニングするのに適した肉は①風味に欠け②脂肪がほとんどなく③加熱するとパサつきがちな肉が適しています。つまり、鶏むね肉や脂肪の少ない豚肉など。
【理由】
①風味がある肉は、塩水に風味が逃げる
②脂肪が多いと、タンパク質が少ないため保水力があまり上がらない
③水分がたっぷりある肉は、浸透しにくい
ここからは主観です。
ブライニングの塩水の適正濃度を調べてみると3~30%とかなり違っていました。これは、肉の種類、大きさ、温度、浸漬時間等が統一されていないので一般的な答えがありません。ただ、もし家庭でするならフォークで肉に穴をあけ、100gの水に砂糖と塩を5gずつ入れて、1時間漬け込むといいと思います。
参考文献 今さら聞けない肉の常識 料理の科学① 新西洋料理体系Ⅳ