ゆで卵と相性の悪い器

ゆで卵を持ってはいけない器があります。銀でできた皿、あるいは銀メッキした皿です。皿に盛った部分が、あっという間に黒ずんでしまいます。

卵を茹でると、白身のタンパク質に含まれる、硫黄を含むアミノ酸が分解されて、硫化水素を発生します。これが、銀と反応して、黒灰色の硫化銀になり、皿が黒ずみます。


【暗殺対策に銀食器の使用】
銀は硫黄(S)と会うと硫化銀(Ag₂S)となって黒変します。
当時のヨーロッパの人達は、これと同じように、銀はヒ素と会うと黒くなってヒ素の存在を教えてくれると思ったのです。そのため、ルネッサンス期に彫刻をふんだんに施した銀食器が量産されました。しかし、残念ながら銀はヒ素と反応しても黒くなりません。ただ、当時のヒ素は錬成技術が低かったので塩化ヒ素(As₂S₃)などが混じっていたため、数日後に黒くなった可能性があります。
一方で、銀には殺菌作用があります。当時の不潔な水でも、銀食器に入れたら殺菌された可能性はあり、細菌性の下痢は防げたかもしれません。

参考文献 西洋料理のコツ 毒の科学