ステーキ 高温で焼いて「肉汁」を閉じ込める?

「肉を高温で焼き、肉の表面に層を作ることで肉汁の滲出(しんしゅつ)を防ぐ」恐らく一度は聞いたことがあると思います。

結論から言えば、これは間違いです。

この間違った情報は、ドイツ人の物理学者ユストス・フォン・リービッヒから始まった伝説です。19世紀、リービッヒは肉の表面のタンパク質が熱によって凝固することを知りました。さらにこの物理学者は、この事実を過大解釈し、凝固した皮が肉汁を閉じ込めるという仮説を立てたのです。強い熱は肉をコーティングし、肉汁の滲出を防ぐ、という考えはすぐにイギリスに広がり、続いてアメリカでも一般化した後、フランスに戻ってきて、広がりました。
※リービッヒは肉を煮る場合、肉の表面のタンパク質が固まってバリアになると主張しましたが、その表面を焼く場合については自説があてはまると主張したことはありませんでした。


①焼いているステーキ肉から出るジュウジュウという音は、肉から液体(肉汁)が進出し、蒸発している証拠

②高温で焼いたステーキ肉をもりつけた皿にはすぐに肉汁がたまる

③フライパンをワインなどでデグラッセするのは、焼いている間に肉から滲出し、キャラメル化したおいしい肉汁を溶かすため

④ステーキを焼いている間中、蒸気が立ち上がっている。これは肉汁が蒸発している証拠


ただ、強火で焼く場合もあります。それは、肉汁が流れ出てしまうより先に、出てくる肉汁の水分を蒸発させるため。そうするとことによって肉の表面温度が100℃以上に上昇し、メイラード反応が起こり、表面に焼き色と香ばしい風味がつく。つまり、適度な焦げを付けるため。

カレーやシチューなどを作るとき、同じフライパンで肉や野菜を炒める

参考文献 フランス料理の「なぜ」に答える フランス料理の「なぞ」を解く 料理の科学大図鑑 フランス式おいしい肉の教科書 食の科学